満員電車で見つけた”謎の忘れ物”が、まさか翌日、社内SNS炎上の引き金になるとは。
毎朝のルーティン、その中に潜むイレギュラー
いや、本当に「まさか」って、日常の中に転がってるもんなんですね。特に、毎朝の満員電車。あれはもう、人間が圧縮されていく様子を定点観測する社会実験みたいなもので、思考停止の極みに達している状態がデフォルトです。そんな、ただでさえ「生きてるだけで偉い」みたいな状況の中、視界の片隅に、妙に引っかかる“何か”があったんですよ。まるでそこだけ時空が歪んでいるかのような、不思議な物体が。この時は「ふーん」くらいのもんで、まさかそれが、翌日、会社をちょっとした混乱に陥れる「社内SNS炎上」のきっかけになるとは、夢にも思っていませんでした。
社内SNS炎上とは?
ええ、その「社内SNS炎上」について、軽く定義しておきましょう。これはですね、企業が従業員向けに運用しているクローズドなSNSプラットフォーム(情報共有や交流を目的としたもの)において、特定の投稿や発言に対し、批判的な意見や反論、不満などが集中し、収集がつかない状態になることを指します。一般的なSNSでの炎上と決定的に違うのは、身内が相手だということ。外野がいない分、内側の温度が上がりやすいというか、なんというか、逃げ場のない独特の熱気を帯びるのが特徴ですね。
拾われた”謎”が、まさかの社員の”秘め事”と遭遇
通勤電車の終着点、謎の生物の置き土産
さて、前章で触れた「まさか」の物体、あれがですね、私にとってはとんでもない伏線だったわけです。あれは忘れもしない、とある雨上がりの朝。いつものようにギュウギュウに押し込められ、車窓の外を流れる景色も、隣の人の後頭部も、何もかもがどうでもよくなっていたその時。ドアが開いて人がどっと降りていった後の座席に、ソイツはいたんです。
ええ、ソイツですよ、ソイツ。陶器製の、やけにリアルなフクロウの置物。体長20センチくらいでしょうか。それがね、妙に存在感を放ってるんですよ。普通、忘れ物って、傘とかスマホとか、あとはせいぜい雑誌とかじゃないですか。それがフクロウ。しかも、ちょっと目つきが悪くて、なんというか、見るからに「ただの置物じゃない」オーラを放ってる。私、正直「ここで誰かの忘れ物を拾うべきか否か」で一瞬悩みました。駅員さんに届けるべきか? でも、それってちょっと面倒くさい。そもそも、こんなに存在感があるものを、どうやって忘れたんだろう? 抱きかかえて通勤してたのか? なんてことを、わずか数秒の間に思考の宇宙を駆け巡らせたわけです。結局、私は傍観することを選びました。だって、自分のじゃないし、ねぇ(いや、口癖は使わないんだった)。
そう、結局、そのまま私は会社へと向かいました。フクロウはそこに残されたまま。その日の仕事中も、ふとした瞬間にあのフクロウの鋭い眼光が脳裏をよぎるんです。一体、誰があんなものを持ち歩き、そして忘れ去ったのか。まるで、推理小説の導入部だけを読まされたような、消化不良の感覚。
社内SNSに投下された「衝撃の一枚」
そして、翌日ですよ。会社に到着して、いつものように社内SNSを開いてみたんです。あれは今や、社内の情報共有や、ちょっとした雑談の場として定着しています。たまに誰かの誕生日が投稿されたり、新入社員の紹介があったり、あとは「会議室のエアコンの調子が悪い」みたいな緊急連絡なんかも流れてくる。そんなごくごく平和なタイムラインに、それは突然、降って湧いたんです。
一枚の写真。
……フクロウでした。
あの、私が昨日、満員電車で見て見ぬふりをした、あの陶器製のフクロウが、まさしくそこに写っているではありませんか。
「え、これって、まさか…?」
投稿主は、営業部の石川雄大(いしかわゆうだい・仮名)さん。彼は普段から真面目で、社内SNSにも業務連絡以外のプライベートな投稿はほとんどしないタイプです。そんな石川さんが、まさかのフクロウの写真付きで、こんなコメントを添えていたんです。
「【忘れ物のお知らせ】本日午前8時頃、〇〇線の電車内(〇〇駅停車中)にて、こちらのフクロウの置物が座席に置き忘れられているのを発見いたしました。駅員さんにお預けしていますので、心当たりのある方は〇〇駅にお問い合わせください。それにしても、リアルなフクロウですね…(笑)」
…私、凍り付きましたね。だって、私が「面倒くさい」という理由でスルーしたフクロウを、石川さんはちゃんと駅員さんに届けて、しかもわざわざ社内SNSで情報共有までしてくれてるわけです。なんて律儀な人なんだ…と感心しつつも、自分の昨日と今日との行動の差に、ちょっとだけ胃がキリキリするような感覚がありました。
しかし、私が本当に驚いたのは、その後の展開です。石川さんの投稿から数分後、コメント欄が異様な盛り上がりを見せ始めたんです。
「え、このフクロウ!もしかしてあれじゃないですか!?」
「いやいやいや、まさか(笑)でも、似てるな~」
「これ、A部長のデスクにあるやつと一緒じゃない?!」
「あ、ホントだ!」
A部長というのは、うちの会社のベテラン部長で、普段は厳格なんですが、たまに天然な行動をして周囲を和ませる、憎めないキャラクターの持ち主です。そのA部長の名前が、なぜかフクロウの忘れ物をきっかけに急浮上してきた。私の頭の中には「?」マークが飛び交いました。
実は、このフクロウの置物、ある部署の「ゲン担ぎグッズ」だったんです。それも、ただのゲン担ぎグッズではない。営業部の、特定のチームが、重要な取引先との打ち合わせの際にだけ持ち出す、いわば「秘密兵器」のようなものだったらしいんです。その「秘密兵器」が、なぜかA部長がいつも持ち歩いていて、その日の朝、うっかり電車に忘れてきてしまった…というのが真相だったわけです。
コメント欄は、瞬く間に「A部長、またかよ!」「あれってゲン担ぎのフクロウだったんだ!」「あのフクロウ、実はすごい効果あるらしいよな(笑)」といった、内輪ノリのコメントで溢れかえりました。中には「これって個人情報じゃないの?(笑)」なんていう、ちょっと際どいツッコミまで。
石川さんは、善意で忘れ物の情報を共有しただけなのに、結果的に社内SNSで一種の「祭り」状態を引き起こすことになろうとは、夢にも思わなかったでしょう。いや、むしろ、彼自身が一番びっくりしたんじゃないでしょうか。そして、この「祭り」は、単なる笑い話では済まない方向に、ジワジワと進んでいくことになるわけです。
拡散する内輪ネタ、見えないデッドライン
祭りから教訓へ、事態の収束地点
さて、石川さんが善意で投稿した「忘れ物のフクロウ」は、瞬く間に社内SNSを駆け巡り、A部長のまさかの「秘密兵器」として、内輪の笑いをかっさらいました。しかし、この「祭り」が単なる笑い話で終わらなかったのは、先述の通り、身内同士のSNS特有の閉鎖性と、そこから生まれる無意識の拡散力にあったんです。
コメント欄には、「A部長、フクロウいないと契約取れないんすか!?」「今度からフクロウレンタルします(笑)」といった、一見すると愛のあるイジりなんですが、これがもう収拾がつかない。A部長自身も、最初は「お前ら、面白いこと言うな!」なんて返していたものの、さすがに「もうやめてくれ…」というスタンプが連投され始め、最終的には「すまない、私が悪かった。もうその話は終わりにしよう」と、まさかの降伏宣言ですよ。
石川さんも、自分が火種を作ってしまったことに対し、責任を感じていたようです。私が見る限り、彼は翌日、A部長にこっそり謝りにいっていました。まさか、自分が拾った忘れ物で、こんな社内のお祭り騒ぎを引き起こすとは、彼も夢にも思わなかったでしょう。いや、本当に「まさか」が満載な話です。
このフクロウ騒動、最終的にはA部長の「降伏宣言」をもって収束したものの、社内には確かに、一つの教訓を残していったように思います。それは、デジタル空間におけるコミュニケーションの、ちょっとした「落とし穴」のようなものです。
デジタル時代の「壁」と「窓」
社内SNSって、すごく便利なんですよね。気軽に情報共有できるし、普段あまり接点のない部署の人とも、ちょっとした雑談を通じて仲良くなれたりする。まるで、部署の壁を取り払った「大きな窓」のような存在です。でも、同時に、そこには「壁」も存在します。それは、気軽に投稿できるがゆえに、どこまでが許される情報で、どこからが「内輪を越えた暴露」になるのか、その境界線が非常に曖昧だということです。
今回の場合、フクロウの忘れ物という些細な出来事が、A部長の意外な一面や、部署内の特定の「ゲン担ぎ」という、比較的プライベートな情報にまで及んでしまった。投稿した石川さんに悪意は一切なかったし、コメントした人たちも、まさかA部長があそこまで困惑するとは考えていなかったはずです。しかし、一度デジタル空間に放たれた情報は、個人の意図を超えて、まるで意思を持ったかのように拡散していく。それは、もう誰にも止められないんですよ。だって、そこに「いいね!」とか「コメント」とかいう燃料が投下されれば、あっという間に燃え広がるんですから。
まとめ:投稿ボタンを押す前に、ワンクッションの「間」を
今回のフクロウ事件から学んだこと。それは、社内SNSのようなクローズドなコミュニティであっても、私たちは常に「ちょっとした配慮」を忘れてはならない、ということです。
誰かの忘れ物を善意で共有するのは、素晴らしい行動です。しかし、その情報が、誰かのプライベートな一面を明るみに出したり、意図せずして特定の個人や部署の内情を晒すことにつながる可能性も、ゼロではありません。
だからこそ、投稿ボタンを押すその前に、ほんの一瞬でいい。「これは、本当にみんなに共有して良い情報だろうか?」「もしかしたら、誰かが困る可能性はないか?」と、ワンクッションの「間」を置く。たったそれだけのことが、無用な「祭り」や「炎上」を防ぐ、最強の解決策だと、私は思うわけです。
満員電車の忘れ物一つで、ここまで考えるハメになるとは、私も夢にも思っていませんでしたよ。本当に、日常って面白いですね。
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